相続税申告(相続発生後)
相続税についての税理士の選び方
1 税理士にも得意分野がある
税理士にも得意分野があります。
税金に関する業務分野には所得税や法人税、相続税などの分野がありますが、実は、多くの税理士が取り扱っているのは所得税や法人税です。
顧問の会社や個人事業主を持っており、その会社の法人税や所得税の申告業務をしているという税理士が多いのです。
そのような税理士の中には、相続税の業務をまったく取り扱っていないか、数年に1件という頻度でしか扱っていないという方もいらっしゃいます。
相続税については、他の税金の業務分野の知識がただちには役に立たないことも多く、法改正や税務上の取扱いが変更になることもしばしばです。
さらに、相続税の対策をしようとした場合には、相続税だけの知識では足りず、贈与税に関する知識も必須になるのですが、これを日頃から扱っているという税理士ばかりというわけでもありません。
そのため、相続税を得意としている税理士以外の税理士に依頼してしまうと、相続税などの相続に関わる税金に関する詳細な知識を持っていなかったり、経験が少なかったりするために、正確な申告内容とは異なる内容で申告してしまったり、使えるはずの控除を使えていなかったり、適切なアドバイスができなかったりするため、不利益を被るリスクがあります。
そのため、たとえば、友人や知り合いに税理士がいるからといって、その税理士に相続税に関する依頼をするといったことは、その税理士が相続税を得意としていない場合がありますので、安易にそのような行動をとることは避けるべきでしょう。
相続税に関する税務を依頼する場合には、相続税に強い税理士を選びましょう。
2 相続税に強い税理士の選び方
相続税に強い税理士を選ぼうというのであれば、その税理士が相続税に力を入れているかどうかを調べてください。
一番手軽な方法は、ホームページなどで相続税に力を入れているかを確認するという方法があります。
さらに詳しく調べたい場合には、ホームページに相続税に関する記事がたくさん記載されているかどうかなどを調べてください。
もちろん、ホームページだけの記載では分からないこともあるかと思いますので、実際に税理士との相談をしたうえで、相続税に関するアドバイスを受けて、相続税に詳しい税理士かどうかを確かめてください。
最近は、相談料を無料で受けている税理士もいますので、気軽に連絡をとって、相談をしてみてください。
相続税の申告をするための準備
1 相続税の申告期限
相続税は、被相続人が亡くなったのを知った日の翌日から10か月以内に申告をしなければなりません。
相続税の申告をするためには、さまざまな準備が必要です。
万一、相続税の申告が間に合わなかった場合には、申告期限に遅れたことによるペナルティを受けることになります。
この場合には、申告が遅れたことによる税金の加算があったり、利用できたはずの特例が利用できなかったりということがありますので、しっかりと準備を進めましょう。
2 相続人を確定させる作業
相続税の申告をするためには、相続人を確定する作業が必要です。
相続人を確定させるには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が必要です。
また、相続人全員の現在の戸籍も必要になります。
代襲相続が発生していた場合(たとえば、亡くなった方の子どもが、すでに亡くなっていた場合など)には、被代襲者(先に亡くなっていた子)の出生から死亡までの戸籍も必要になります。
相続人は法律で順位が定められており、誰が相続人になるのかはこれで決まりますし、それに対応して、どの範囲で戸籍が必要になるかが決まってくるのです。
相続税の基礎控除額は、相続人の数によって決まりますので、相続人を確定して初めて基礎控除額が決まります。
3 相続財産の有無の調査
相続税の申告をするためには、相続財産を調査する作業が必要です。
相続財産を調査する方法は、不動産や預貯金などによって、それぞれの方法が異なります。
不動産については、自宅に届いている固定資産税等の納税通知書などを調べることで把握することができますし、これが見つからない場合には、市町村役場で名寄帳や評価証明書を取得することで、不動産を把握することができます。
これをもとにして不動産の登記簿を取得した場合に、抵当権の共同担保がついていれば、これによって他の不動産があることを把握することもできるでしょう。
預貯金については、自宅内で通帳を探すことが有効です。
通帳が見つかった場合には、その取引の内容を確認することも重要です。
取引の内容の中に、保険料などの引落しがあれば、生命保険に加入していた可能性があります。
また、取引の内容の中に、「キンコリョウ」などの記載があれば、その金融機関に貸金庫があった可能性がありますので、貸金庫の中を調べた結果、相続財産が新たに判明することもあるでしょう。
そのほかにも、たとえば、年金を受給していたはずなのに、年金を受け取っていた口座が見つからない場合には、判明していない口座がある可能性があります。
判明している口座以外に預貯金があると予想できる場合には、追加の調査が必要です。
相続人の立場であれば、金融機関に口座の有無を照会できますので、亡くなった方が口座を持っていそうな金融機関に照会をして調査をしましょう。
その他の財産として、株式や保険などがありますが、それぞれについての調査の方法があります。
4 相続財産の資料の収集
相続財産を調査した後、相続財産の資料を収集する必要があります。
すなわち、相続税の申告にあたっては、相続の開始時点での相続財産の内容を明らかにする必要がありますので、これのもととなる資料を準備する必要があります。
不動産であれば、たとえば土地は、路線価方式や倍率方式などで算出された評価額に、土地の形状や広さなどによる必要な補正を加えたうえで、その評価額が決まります。
要件を満たせば、小規模宅地等の特例を利用することで、評価額を下げることもできます。
このように、相続財産が相続の開始時においていくらの価値があったのかが分かるために必要な書類をそれぞれの財産に応じて準備していく必要があります。
5 納税資金の準備
相続税の納付期限も、相続税の申告期限と同じですので、これまでに納税資金を準備しましょう。
通常は、相続税の申告と同時に納付も行います。
場合によっては、相続税の額は非常に高額になりますし、このときまでに遺産分割協議が成立していないなどの事情があった場合には、相続人自身の資金から相続税を納付しなければならないこともあります。
相続財産の大部分が不動産であった場合などには、相続財産の一部を換価しなければ相続税を支払えないという場合もありえます。
相続財産の調査を進めながら、納税額がいくらになりそうかの概算をしておくことで、納税についての計画を立てることができます。
6 準備はなるべく早く進める
このように相続税の申告のためにはさまざまな準備が必要です。
申告や納税の期限に遅れないように、なるべく早く準備を進めることが必要です。
どのような準備を進めればよいのかは、税理士のサポートを受けずに進めることは難しいと思いますので、そのアドバイスを受けながら着実に相続税の準備をするようにしてください。