相続税について税理士に相談すべきケース
1 相続税申告
相続税に関して税理士に相談すべきケースとして、最も多いのは相続税の申告でしょう。
相続税は、亡くなった方の財産を相続するときに、相続人らに対して課される税金です。
なお、どの程度の相続税を支払わなければならないのかは、相続財産の額、相続人の数や相続する内容によって異なります。
⑴ 相続財産の評価が必要な場合はご相談ください
相続財産の額を計算する場合には、相続財産を評価することが必要になります。
預貯金であれば、基本的に、亡くなった時点での残高が財産額となりますから、評価をすることは難しくはありません。
ですが、不動産については、どの程度の価値のある財産であるかを正当な手順で評価する必要があります。
この評価額は、法律上、「時価」とされているのですが、具体的にどのような方法で評価をするかは、国が定めている方法で行うのが通例です。
各道路について定められている「路線価」を基準として、土地の形状や間口、土地がどのような用途に用いられているかなどによって、必要な補正をして、その土地の評価額を計算する場合があります。
土地が所在する地域によっては、土地の固定資産税評価額を基準として、その額に必要な倍率を乗じて計算することもあります。
株式についても、上場会社の株式と、株式の流通が制限されている会社の株式とでは評価の方法が異なります。
上場会社の株式は、亡くなった日における、複数ある株式指標の一つを選択して評価することになります。
このような財産の評価は、十分な知識がなければ難しい面がありますので、相続税の申告が必要で、財産の評価が必要な場合には、税理士に相談しましょう。
⑵ 相談のタイミングについて
相談のタイミングとしては、どのように遺産を分割するかを決める前に税理士に相談しておいた方がよいでしょう。
なぜなら、どのような遺産分割にするかによって、相続税の納付額が大きく異なることがあるからです。
このようなことを知らずに遺産分割を決めてしまうと、払う必要がなかったかもしれない相続税を支払うことになりかねませんし、遺産分割の内容が決まった後に、このような事実を知ってしまった場合には、遺産分割をやり直すことにもなりかねず、そのことで相続に関する紛争が生じてしまうおそれもあります。
このようなリスクを避けるために、遺産分割をする前に、税理士に相続税に関する相談をしておくことをおすすめします。
⑶ 相続財産が多くないケースでもご相談ください
相続税においては基礎控除額というものが定められており、相続財産がこの基礎控除額を下回っていれば、相続税の申告の必要がありません。
この基礎控除額は、3000万円に、相続人の数に600万円をかけたものを加えることで計算ができます。
この基礎控除額を超えるかどうかが微妙なケースにおいて、基礎控除額以下であると安易に見込んで、申告をしないということは避けましょう。
不動産等の財産をしっかりと評価してみると、基礎控除額を超えてしまっていたということはあり得ますし、仮に、相続税の申告が必要であるにも関わらず、申告や納付をしていないとなれば、大きなリスクを背負うことになります。
そのため、相続財産額がそれほどないと思われるケースでも、念のため、税理士に相続税についての相談をしておかれることをおすすめします。
相続税の申告では、税務署に提出しなければならない書類も多くあります。
また、10か月という申告と納付の期限がありますから、余裕を持って、税理士に相談をされて準備を進めるようにしましょう。
2 生前対策
相続税についての生前対策をしようと考えておられる方は、税理士に相談しましょう。
家族に対して生前に贈与をすることで相続税額を下げようとされている方を多くお見かけしますが、この贈与もしっかりと正当な手順で行っていないと贈与であると認められないおそれがありますし、贈与であると認められなければ、対策をしたことが無に帰してしまいます。
生命保険金は、相続税の対象となるものの、非課税枠が認められているのですが、その方がこのようなことを知らないままでいて、いざこの制度を利用しようと思ったときには、年齢や持病のために生命保険に加入できなかったということもあります。
また、相続税を節約しようという視点だけではなく、相続人がどのように相続税を納付すればよいのかを準備しておく納税対策も重要です。
納税対策をするためには、相続の内容を決めたうえで、それぞれの相続人らの相続税額の見込みを正確にシミュレーションする必要があります。
このようなシミュレーションは、税理士でなければ行うことが難しい面がありますので、税理士に相談をしたうえで、相続税対策をすることが重要です。
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